ウェブサイトをデザインする際、レイアウトやコンテンツに目が向きがちですよね。それ自体はとても楽しい作業ですが、意外と見落とされがちな重要な要素があります。それが「色」です。色はウェブアクセシビリティにおいて重要な役割を果たします。視覚に障害がある方や色覚多様性を持つ方を含む、すべてのユーザーにとってコンテンツが見やすく、理解しやすいものにするために欠かせません。
特に「コントラスト(色の明暗の差)」は、文字の読みやすさに直結します。このブログでは、なぜ色がアクセシビリティにとって重要なのか、そして誰にとっても使いやすい配色をどう設計すれば良いのかをご紹介します。
色がアクセシビリティにおいて重要な理由
特に「色のコントラスト」は、視覚に関するさまざまなニーズに対応するための基本です。
たとえば、視力が弱い方にとっては、白い背景に薄いグレーの文字のような、コントラストが弱い配色は読みづらく感じることがあります。また、赤と緑などの色の組み合わせは、色覚異常のある方には区別が難しいことがあります。こうした課題も、高いコントラストでデザインすることで大きく改善できます。
アクセシビリティは単なる「改善策」であるだけでなく、近年では法律で求められるケースも増えています。たとえば、2025年に施行される欧州アクセシビリティ法(EAA)では、一定のウェブサイトやデジタルサービスに対し、色のコントラストや色に頼らない情報伝達など、アクセシビリティ基準への準拠が義務づけられます。これに違反した場合、企業には罰金が科される可能性もあるため、特にEU向けのビジネスでは重要なポイントです。
さらに、アクセシビリティの配慮は、視覚に障害のある方だけでなく、明るい屋外や小さい画面など、見づらい環境でサイトを閲覧するすべての人にとっても役立ちます。
アクセシブルなカラーパレットの条件とは?
色のアクセシビリティを高めるには、コントラストだけでなく、いくつかの要素を意識することが大切です:
- 十分なコントラスト: 背景と文字の間には、Web Content Accessibility Guidelines(WCAG)が推奨するコントラスト比が必要です。
- 色だけに頼らない情報伝達:リンクに下線をつけたり、アイコンを添えたりすることで、色だけに頼らない伝え方ができます。
- 色覚多様性への配慮: 赤と緑、青と黄など、よくある色覚タイプでも識別しやすい組み合わせを選びましょう。
- 配色の一貫性: 同じ色は同じ意味や役割で使うことで、ユーザーが直感的に操作しやすくなります。
- デバイス間での見え方: 画面や環境によって色の見え方は変わります。実機でのテストも大切です。
これらを意識することで、より多くの人にとって使いやすく、親しみやすいウェブサイトを作ることができます。

コントラスト比とは?
見やすいコントラストを判断するために使われる指標が「コントラスト比」です。これは、文字と背景の色の明度差を数値で表したものです。
比率は 1:1(白文字に白背景のように全く差がない状態)から、最大 21:1(黒文字に白背景など)まであり、数値が大きいほどコントラストが強く、読みやすさが向上します。
ウェブコンテンツアクセシビリティガイドライン(WCAG)によると、通常のテキストには最低 4.5:1、18ポイントまたは14ポイントの太字以上の大きな文字には 3:1 のコントラスト比を推奨しています。
低コントラスト比の例
たとえば、薄いグリーンのボタンに白い文字が載っているデザイン。パッと見は読めそうに見えるかもしれませんが、Chromeアクセシビリティツールで確認してみると、コントラスト比はわずか1.71:1。これは非常に低く、多くのユーザーにとって文字が読みづらくなるレベルです。

カラーアクセシビリティのチェック方法
配色のチェックは、以下のようなツールを使うことで簡単に行えます:
- Chromeアクセシビリティレポート:Chromeブラウザ内でページの要素ごとにコントラストを素早く確認できます。
- Equalize Digital Accessibility Checker:WordPressプラグインとして使える、アクセシビリティ全般に対応したチェッカーです。
- WAVEウェブアクセシビリティ評価ツール:無料のWebアクセシビリティ診断ツール。色に関するエラーも確認できます。
- Deque Universityコントラストチェッカー:試したい色の組み合わせを簡単に評価できる、無料のチェックツールです。
FigmaやAdobeなどのデザインツールにも、配色チェック用のプラグインや機能が組み込まれていることが多いので、開発前の段階でもしっかり確認できます。

見た目も美しい、アクセシブルな配色例
アクセシブルな配色だからといって、見た目をあきらめる必要はありません。たとえば、WordPress.comのテーマディレクトリには、アクセシビリティに配慮した美しいデザインが多数揃っています。

Koinonia
Koinoniaは、非営利団体や教会など、コミュニティを中心としたウェブサイトづくりにぴったりのテーマです。クリーンでモダンなレイアウトが特徴で、読みやすさとナビゲーションのしやすさに重点を置いて設計されています。また、適切なカラ―コントラスト、キーボード操作への対応、スクリーンリーダーとの互換性といったアクセシビリティ要素も備えており、さまざまなユーザーが無理なくコンテンツにアクセスできるよう配慮されています。

| 最も暗い黒 #030203 | ベリーソルベ #FB6669 | ダークサングリア #560122 |

Conference
Conferenceは、イベントやカンファレンスの企画・運営に携わる方のために丁寧に設計されたテーマです。機能性とアクセシビリティの両立を目指しており、誰にとっても使いやすい、インクルーシブなサイト体験を提供します。デザイン面では、直感的に操作できる明快なナビゲーションが特長。さらに、高コントラストな配色設定にも対応しており、視覚に不安のある方でもコンテンツをしっかり読み取れるよう配慮されています。

| シグナルブルー #345EFC | エメラルドグロー #49EF7C | ディープブラック #1E1D2C |

Fixmate
FixmateはWordPress.comチームによって開発されたもので、明るい背景に高コントラストのテキストを組み合わせ、視覚に障害のある方でも最大限読みやすい設計となっています。見出し構造は論理的に整理されており、キーボードでの操作が可能なメニューや、色だけに頼らないリンクのスタイリングなど、アクセシビリティのベストプラクティスにしっかりと準拠しています。どんなユーザーでも安心して情報にアクセスできるよう、細部まで配慮されたテーマです。

| ゴールデンマリゴールド #FDC62A | ミッドナイトコーラ #0F0C0C | タイドプールジェイド #2D92A1 |
もっと自分らしいデザインに仕上げたいとお考えですか?WordPress.comでは、プレミアムプラン以上をご利用いただくと、アクセシビリティに配慮したカラーパレットの設定と実装が簡単に行えます。テーマの配色は自由にカスタマイズできますが、ボタンや見出し、本文などさまざまな場面で色のコントラスト比をしっかり確認・テストすることが大切です。見た目のデザインとアクセシビリティ、どちらも妥協せずに両立させましょう。
アクセシブルな色づかいがもたらすもの
アクセシビリティ対応は、単にルールを守るためではありません。
それは、「誰でも安心して使える場所をつくる」という、大きな意味を持つデザインの在り方です。色の使い方にちょっと気を配るだけで、あなたのサイトはもっとやさしく、もっと多くの人に届くものになります。
インクルーシブなWordPressサイトをもっと深く学んでみませんか?
ここから始められる、おすすめのリソース(日本語未対応)をご紹介します: