WordPress の開発者であれば、cPanel に一度は触れたことがあるかもしれません。多くの従来型ホスティングプラットフォームで利用されているため、多くの開発者にとっては、cPanel が標準的なコントロールパネルとして定着しています。WordPress.com のようなマネージドホスティングに申し込んだ際に、cPanel が見当たらないと「何か大事なものが欠けているのでは?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、こうした感覚は「WordPress.com は cPanel がないから開発者向きではない」という誤解につながりがちです。実際には、WordPress.com では古いインターフェースや不要な煩雑さを排除しつつ、開発に必要なすべてのツールを提供しています。
この記事では、cPanel の概要や利用目的、WordPress.com で採用していない理由、代わりに提供している機能、さらには WordPress.com のアプローチがなぜ優れているのかについて詳しくご紹介します。
さっそく見ていきましょう。
cPanel とは?
cPanelとは、多くのウェブホスティング会社(特に共有ホスティング)で利用されているホスティングコントロールパネルです。ブラウザベースのグラフィカルインターフェースを通じて、サーバーやウェブサイトの様々な管理を行うことができます。

元々は、専門的な知識がなくてもサーバー管理ができるように設計され、現在では幅広い機能性から開発者にも広く普及しています。
cPanelを使うことで、以下のような管理が可能:
- ファイルマネージャーを用いたウェブサイトファイルの管理
- FTP(ファイル転送プロトコル)アカウントの作成と管理
- MySQL データベースの作成と管理
- ドメイン、サブドメイン、DNS(ドメインネームシステム)レコードの設定
- ドメインに紐付けたメールアカウントの作成と管理
- WordPress などの CMS(コンテンツ管理システム)をワンクリックでインストール
- バックアップ管理、SSL 証明書、サーバー利用状況の確認
- CDN(コンテンツ配信ネットワーク)との連携
cPanelはウェブサイト本体とは別のサードパーティ製プログラムであり、通常は別途ログインが必要です(例:https://example.com:2083)。

また、cPanel はライセンス制の有償ソフトウェアであり、ホスティング会社はその利用にコストが発生します。ホスティング会社ごとにカスタマイズされるため、提供元によってインターフェースが異なる場合もあります。
もしcPanelを使ったことがない方は、公式デモ版で試すことができます。
なぜ WordPress.com では cPanel を使わないのか?
WordPress.com は cPanel がないため「制限が多い」と考えられることもありますが、これは共有ホスティングに慣れた開発者の先入観によるケースが多いです。実際には、 WordPress.com は cPanel が提供する機能を欠いているのではなく、より効率的でシンプルな独自アプローチを採用しています。
WordPress.com のビジネスおよびコマースプランでは、WordPress 開発に特化した独自のコントロールパネルを提供しています。開発者が実際に必要とする機能へ直接アクセスでき、余計な画面切替や煩雑さを排除した統合インターフェースを実現しています。
これにより、サーバー設定を変更するたびに別の外部アプリケーションに切り替える必要がなく、必要な操作をスムーズに行うことができます。
WordPress.com が提供するホスティング機能
WordPress.com のビジネスおよびコマースプランでは、高速・安全なホスティングに加え、開発者向け機能が充実しています。これらはすべて、管理画面内「サイト」メニューの「設定」からアクセス可能です。

SSH
SSH(セキュアシェル)を利用すれば、コマンドライン経由でサーバー環境にアクセスできます。WP-CLI コマンド実行、テーマやプラグインファイルの編集・管理、サイトのトラブルシューティングなどが可能です。
WordPress.comでは、前述のサイト設定の SFTP/SSH タブから認証情報を作成できます。

ボタンをクリックすると、SSH および SFTP 接続用の URL、ポート、ユーザー名、パスワードが表示されます。

また、ページ下部で SSH アクセスを有効化する必要があります。

さらに、SSH キーを生成するオプションもも用意されています。これにより、サイトへの接続がさらに簡単になります。詳細な手順や利用可能なシェルコマンドについては、SSH に関するドキュメントをご参照ください。
SFTP
SFTP(セキュアファイル転送プロトコル)により、サーバーファイルへ直接安全に接続可能です。テーマ、プラグイン、メディアアップロードに完全アクセスし、独自コードのデプロイや手動編集が可能です。
作成した認証情報をコピー&ペーストするだけで、FTP クライアント(例:FileZilla 、Cyberduck)に接続できます。

詳細については、私たちのSFTP に関するドキュメントをご覧ください。最適なパフォーマンスとセキュリティを維持するため、WordPress.com では一部のプラグインの利用を制限しています。中には互換性が完全ではなく、SFTP 経由でアップロードしても有効化できないプラグインもあります。特定のプラグインをご希望の場合は、お気軽にお問い合わせください。代替プラグインのご提案も可能です。
データベースへのアクセス
WordPress.com では、phpMyAdminを利用してサイトのデータベースにアクセスできます。サイト設定内の「データベース」タブにある「phpMyAdminを開く」ボタンをクリックするだけで利用可能です。

ボタンをクリックすると自動的にログインが行われ、データベーステーブルの閲覧や編集、問題のデバッグ、データのカスタマイズが可能になります。

SQLファイルのインポートを含め、phpMyAdminでおなじみの各種機能がすべて利用できます。セキュリティを高めるために、SQLコマンドは事前にステージングサイトテストすることも可能。万が一問題が発生しても、バックアップから簡単にサイトを復元できます。
詳しくは、データベースへのアクセスに関するドキュメントをご覧ください。
cPanel がなくてもご安心を
多くの開発者は cPanel からスタートしますが、WordPress サイトを管理する方法はそれだけではありません。そして、必ずしもcPanelが最善というわけでもありません。
WordPress.com では、よりシンプルで高速、効率的な管理環境をメインのサイトダッシュボード内に統合して提供しています。必要な機能だけを厳選して搭載しているため、あらゆるタイプのウェブサイト制作をスムーズに進めることができます。
WordPress.com でサイトを構築するメリット:
- 急激なアクセス増にも対応する自動バーストスケーリング
- 99.999%の稼働率とセカンダリーデータセンターへのリアルタイム複製
- 自動画像圧縮および画像管理
- 6大陸にまたがる28以上のデータセンターによるグローバルCDN
- DDoS攻撃対策、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)、プロアクティブな脅威監視を標準搭載
- コア自動アップデート、バックアップ、マルウェアスキャン
- WordPress.comの専門チームによる開発者向けサポート
さらに、WordPress.comでは WordPress Studio というオープンソースの軽量ローカル開発ツールも無償でご利用いただけます。ぜひ WordPress.com でサイトを構築してみてください。